
前日はイーストリバーだったから、西のハドソンリバーへ。
20分ほどで広大な川に着いた。2009年1月に旅客機が不時着したが全員無事に救出され「ハドソン川の奇跡」とよばれたのを思いだす。そういえばつい最近も観光ヘリが墜落していた。
対岸はニュージャージーで、その先端の沖に自由の女神が豆粒のようにみえる。

川沿いは公園になっていて、多くの人がジョギングをしている。9割は白人だ。水泳は白人、バスケは黒人……というように、ジョギングにも人種的なすみわけがあるのかな。

しばらく上流へ歩いて街にはいると、南北につらぬく高架があらわれる。その上は鉄道跡で、「ハイライン」という散歩道になっている。今は16〜23stのあいだは工事のためか閉鎖中だが、それより北は多くの人がそぞろ歩いている。高架だから遠くまでみわたせて楽しい。

もとは1929〜34年にかけて建設されたが、マンハッタンから工場が減った1950〜60年代にはしだいに利用されなくなり、1980年に廃止された。その後20年間放置されていたが、1999年から民間の団体が「再利用」の活動をはじめ2009年に最初の区間が散歩道に再生され、2019年までに完成した。民間中心がこれだけの事業を展開するいう「民」のエネルギーがすごい。江戸時代に祇園祭りを盛大にもよおした京都の町衆のような財力と街への愛があるようだ。

ハイラインの北の端のハドソン川沿いには地下鉄の基地がある。ビルの下のトンネルから電車が出入りするさまも壮観だ。

ハイラインの周辺からハドソンスクエアに歩いていくとエンパイヤステイトビルが目の前にそびえる。子どもの小ころから知っているから、おのぼりさんのようにカメラをむけてしまう。

夕方は、現地の大学の先生にジャズクラブに招待してもらった。
セントラルパークの南端のビルへ。1階ホールにたつ男女2体の巨大な人形は、陰部まで再現されている。しかも局部だけテカテカ光っている。

空港のようなセキュリティ検査をして、5階のDizzy’s Clubへ。
大きな窓からは中央公園の緑がのぞめる。
この日の演奏は、トランペットのRyan Kisorがリーダーをつとめるグループだ。
ビールや食事をたのんで、ほぼ食べ終わったころに、窓の外のセントラルパークの緑を背景にした舞台で演奏がはじまる。

サックスもペットもベースもドラムもコントラバスもぴったり。逆にそれぞれのソロはわざとはずしたり、テンポをかえたり…自由自在。へぇ、ジャズってこんなに自由だったのかぁとおどろく。大阪や東京できいた日本のジャズのようなかたくるしさをかんじない。素人なのにひきこまれて2時間があっというまに終わってしまった。