1994年の中国映画。
舞台は1970年代の北京。文化大革命の時代、大人は政治闘争、青年は農村におくられ、北京のまちは十代の若者が跳梁跋扈していた。毛沢東をたたえる歌などが時代の空気を表現する。
軍用トラックと公共交通機関はあるが、庶民はおっさん自転車が主要な交通機関だ。不良少年たちも、バイクではなくて自転車で暴走する。1986年に中国を旅行したときはまだそんな雰囲気だった。多くの人が人民服を着ていたし。なつかしい風景だ。
主人公は16歳の不良少年。愚連隊同士がけんかをくりひろげ、そのBGMがインターナショナルというのがおもしろい。少年は合鍵をつくる天才で、あちこちの家にしのびこむ。そのなかでちょっと年上の少女ミーランとであってひとめぼれしてしまう。
ミーランと話せるのがうれしくて、不良少年仲間にも紹介する。ところが、仲間で一番イケメンの男とミーランができてしまう。
嫉妬からミーランをおそって、彼女はもちろん友人も失ってしまう……なんとも切ないひと夏の物語だ。
映像がきれいだからなおさら甘酸っぱくて、文革という背景があるから感情がするどくぶつかりあっていることもわかる。
「ひと夏の恋物語」でしかないのだけど、30年後からふりかえってえがく形だから、記憶もあやふやになり、妄想もいりまじっている。そのあやふやな部分を、セピア色の映像などで表現しているのもおもしろかった。
太陽の少年<チアン・ウェン監督>
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