fujiman– Author –
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本と映画と博物館
グアテマラの虐殺を魔術的にえがく「ラ・ヨローナ〜彷徨う女」<ハイロ・ブスタマンテ監督>
ラ・ヨローナ(泣く女)とは、夫に捨てられた女が、子どもを溺死させて自らも自殺し、ずぶ濡れの白い服をまとう亡霊となってあらわれる、という中南米では有名な伝説だ。ガルシア・マルケスの魔術的な世界にもつながるこの伝説をベースに、グアテマラの... -
本と映画と博物館
異界・怪異は今もつづく……大阪歴史博物館の特別展
岩手県遠野市のカッパ淵は、最近まで河童の存在を信じられていたあかしだった。みなが信じているものは社会のアクターとして「存在」する。怪異現象が「現実」だった時代は実は今もつづいている−−。 そんなテーマをとりあげた大阪歴史博物館の「異界彷... -
01旅行記
花巻でイーハトーブのなごりをさがす 宮沢賢治めぐり
プランターがない風景のやわらかさ 花巻は1998年3月と99年夏におとずれた。冬のイギリス海岸も、夏の風景も心にしみた。 1999年夏にYHで一緒になった関西のOLが、イギリス海岸周辺の風景に感動してしゃべりつづけていたのをおもいだす。「関東から神戸... -
01旅行記
カッパの神様になった遠野のカッパ淵のおじいさん
おばあさんが展示物 1999年ごろ、出張ついでに遠野物語の里をサイクリングした。「伝承園」は、昔の曲がり家の農家などを移築した観光施設だった。「米もビールもおいしいよね。水がいいからかな」とおばあさんに声をかけると、「山梨の孫も、ばあちゃん... -
本と映画と博物館
ひらめきをのがさない! 梅棹忠夫 世界のあるきかた<梅棹忠夫著、小長谷有紀・佐藤吉文編>
■勉誠出版20230501 私が学生時代、梅棹先生は雲の上の人で、2度か3度、講演会などで目にしただけだが、圧倒的な語りに魅了された。 梅棹は「あるきながら、かんがえる」という。彼が世界をどう見て、どのような調査をしていたのか。彼ののこした文章と... -
01旅行記
金魚と柳沢吉保の大和郡山
4月はじめ、うららかな天気にさそわれて大阪環状線に乗ったら大和路快速だった。せっかくだから奈良まで行くか、と、のりつづけ「大和郡山」でハッとおもって下車した。 たしか金魚で有名な町だ。 飛騨古川や津和野は、堀に錦鯉がおよぐ風景が印象的... -
本と映画と博物館
「親鸞聖人生誕850年特別展 親鸞─生涯と名宝」で、浄土真宗=プロテスタント=火葬、という妄想三昧
「親鸞聖人生誕850年特別展 親鸞─生涯と名宝」(京都国立博物館)へ。 手紙やらなんやらの地味な展示だろうから当初は興味をおぼえなかったが、福島の浜通りに、北陸や新潟の真宗門徒が大量に移民したという歴史を知って、親鸞の教えがムラにもたらし... -
本と映画と博物館
「真宗移民」の歴史から何を学ぶか 報徳仕法の原動力にもなった宗教移民の研究を眺望する<太田浩史>
■20230426 福島第一原発事故の取材で訪れた南相馬市は、外の人も受け入れる気さくな人が多かった。昔から外からの人をうけいれてきたからだという。 江戸末期には間引きなどによる人口減少で荒廃していたムラを、北陸や新潟からの「真宗移民」が再生させ... -
福島有機
福島・原子力災害の記憶継承施設をめぐる
原子力災害伝承館「天災」であるかのような展示 「東日本大震災・原子力災害伝承館」(双葉町)は。福島第一原発事故の全体像を展示する中核的な施設だ。2020年9月にオープンした。 当初、「語り部」が話す内容について、「特定の団体」(国や東電)の... -
本と映画と博物館
最後の人 詩人・高群逸枝<石牟礼道子>
■藤原書店202303 高群逸枝と石牟礼道子は出会ってはいない。でも石牟礼は高群を母か姉のように思い、逸枝とその夫の橋本憲三は石牟礼のことを後継者のようにかんじていた。 逸枝が亡くなった2年後の1966年、道子は逸枝と憲三の住まいだった東京・世田谷...