本と映画と博物館– category –
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本と映画と博物館
新版 死を想う われらも終には仏なり<石牟礼道子、伊藤比呂美>
■平凡社新書20230320 シャーマンのような石牟礼と、娘世代の詩人伊藤の「死」をめぐる対談。 いつも「死」の隣にいて、死のうとする人によりそい、自らも自殺未遂をくりかえした石牟礼だからこそ、伊藤の「死」についての直球の疑問に真正面からこた... -
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評伝・石牟礼道子 渚に立つひと<米本浩二>
■新潮文庫20230317 はじめは新聞記者の文章だなぁと思って読みはじめた。ところがしだいに石牟礼道子や渡辺京二が乗り移ったように現実と幻の境をふみこえたり、もどったりする。 正気と狂気、この世とあの世、前近代と近代、陸と海のあいだの渚。 合... -
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協同の系譜 一楽照雄<佐賀郁朗>
■(日本農業新聞) 農協の中枢にいて政治とも密接なつながりもっていた一楽照雄がなぜ、政治的には革新に近い、ある意味で農協と敵対する有機農業研究会をたちあげたのか、以前から不思議だった。 この連載は、戦前から「協同組合主義」を体現し、協同... -
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ピカソはへたくその代名詞だったのに……「ピカソとその時代」の感想
ドイツのベルリン国立ベルクグリューン美術館のコレクションをあつめた「ピカソとその時代」を見に行った。ほとんどの展示品が撮影可というのがすごい。 子どものころピカソは「へたくそ」の代名詞だった。「うわー、なにこれ、ピカソの絵みたい!」と... -
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ナチスのキッチン「食べること」の環境史<藤原辰史>
日本の公団団地やマンションのダイニングキッチンや「システムキッチン」は、20世紀前半のドイツの合理的キッチンがモデルという。そのキッチンはアウトバーンと同様、ナチスがつくったものだったというストーリーかと思ったらむしろ逆だった。 機械の... -
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ETV特集「消えゆく“ニッポン”の記録~民俗学者・神崎宣武~」
宮本常一の弟子だった民俗学者の神崎宣武さんは、郷里の岡山・美星町の宇佐八幡神社で神主をしながら東京を拠点に全国の民俗を調査している。東京の花柳界やテキヤなども調査し、これまでに60冊以上の本を書いてきた。 神崎さんという民俗学者をとおし... -
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■時間は存在しない<カルロ・ロヴェッリ、富永星訳>
時間や空間の大きさは絶対的であるというニュートン力学は、アインシュタインの相対性理論によってくつがえされた、ということは知っていた。では時間とはなにか? 生と死とはなんなのか? 「死後の世界」をどう解き明かすのか? この本の結論は「絶... -
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茨木のり子の「詩のこころを読む」は長大な一篇の詩
「自分の感受性ぐらい 自分で守れ ばかものよ」で有名な茨木のり子は昔から好きだったが、彼女が好きな詩ってどんな詩なんだろう? そう思って手にとった。 「生命」をめぐる詩にまずひきつけられる。「空の世界からきて、空の世界にかえっていく。だ... -
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映画宣伝おばちゃんの波瀾万丈の半生記
■「映画宣伝おばちゃん 映画と仕事」(松井寛子、零号出版) 大阪で居酒屋を営みながら映画宣伝の仕事をしている松井寛子さんこと「カンコさん」の半生記。 高校を卒業して結婚して子どもができたのに連れ合いは失踪。32歳で友だちと一膳飯屋を開き、... -
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「美食地質学」入門 和食と日本列島の素敵な関係<巽好幸>
■光文社新書221212 日本食が豊かになったのは明治以降、早く見積もっても江戸期以降だから、「日本食が豊かなのはこの地質のおかげ」とは言い切れないと思うけど、発想のしかたはおもしろい。 ごく簡単に結論をかくならば、4枚のプレートがひしめきあい...