■basilico250119
科学の最先端にいる東大の医師が、人間は超越的な摂理によって生かされ、霊魂は永遠であり、そう考えることが倫理や生きがいの基盤になりうる……と論じる。スピリチュアル本ではない。宗教と科学の境界をたどると、霊魂は死なない、と考えたほうが自然だということがわかりやすく説かれている。
自然科学の手法は、ある現象の要因を細かな要素に分解して調べ、要素を組み合わせることで現象を再現しようとする。こうした「還元主義」は、現象が機械のようなものであれば再現性が高い。だから、対象が人間であれば精神と体をわけて考えるようになった。
科学は懐中電灯のようなものだ。
光量が強まり見える範囲はどんどん広がったけど、光の届く範囲の外には広大な闇が広がっている。「どのように」現象がおきるかは説明できるけど、「なぜ」起きるかは説明できない。
広大な闇について語るのは宗教の役割だったが、最先端の量子力学もそれを示唆するようになってきた。
近代の科学の精神と物質は関係しないという二元論に対して、量子力学の世界観は、仏教、ヒンドゥー教などの東洋思想に似ている。精神も物質も……すべてがつながっていると見る。
近代以降のスピリチュアリズムは、最先端の科学者が先導してきた。優秀な科学者ほど、科学の限界を知っているからだ。
科学の光の届く範囲の外には「神」「摂理」がある。
失敗や挫折、病気や怪我などの災厄とは、摂理が個々の人間に、何かを学ぶために課した試練だとも考えられる。摂理によって創られ生かされているのだから、生きているうちは自らの身体をいたわりながら懸命に生きなければならない……。
人は死なない ある臨床医による節理と霊性をめぐる思索<矢作直樹>
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