■「震災被害からみる未来」−京都弁護士会
京都弁護士会のシンポジウムで、「MS.構造設計」佐藤実さんの講演を聞いた。新築の家は「耐震等級3」にしましょう、という内容だ。
阪神大震災から30年たつが木造住宅の被害がつづいている。地震は天災だが建物倒壊は「人災」と言う。
耐震の基準は1981年と2000年に大きく変わった。2000年に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」で耐震等級がさだめられた。
建築基準法の性能を最低限満たす「耐震等級1」は、数百年に1度の地震(震度6強から7)でも倒壊せず、数十年に1度じょ地震(震度5程度)では住みつづけられる。ここで気をつけたいのは、震度6~7の地震で「倒壊・崩壊しない」という表記だ。これは「1度の震度7なら倒壊はしないが、2度目は危ない」ということを意味する。
耐震等級3は等級1の1.5倍の地震に耐えることができ、震度7でも住みつづけられる。
今回の能登半島地震では、多くの家が倒れて道路がふさがれ、津波から逃げる道もなくなった。消防車や救急車も通れなくなった。新しくみえても倒壊した家もあった。これは古い建物をリフォームしたものだった。逆に築55年の家でも無事な例があった。4年前に介護用のリフォームをした際、工務店が「勝手に耐震補強した」のだという。
門前町は2007年の震度6強の地震で生き残った建物の多くが今回つぶれた。07年の地震で性能が低下したものが、今回の6強でトドメを刺されたのではないか、と推測する。珠洲市は23年に6強があり、8カ月後の24年元日に再び6強におそわれた。6強の地震は「数百年に一度」ではないのだ。
2016年の熊本地震では熊本地震では震度7が2回襲った。耐震等級1の建物は倒れたが、等級3は16棟すべてが無事だった。等級1の「建築基準法の家」は、「2度は耐えられない家」と考えなければならない。
東日本大震災の揺れは強いけど揺れの幅は小さく、早いけど小刻みだった。能登は強さも幅も大きかった。強さのことをガルという単位であらわし、住宅メーカーは「うちは3000ガルでも大丈夫」などと言うが、「幅」も考慮しないと意味ない。
2000年以降の建物でも熊本地震では6%が大破以上となった。能登は2%だった。6%や2%という数字は小さな数字と思ってはならない。調査エリア全体ではその数値だが、倒れた家は局所に集中している。そのエリアに限定すると大半が倒れているからだ。
さらに熊本地震の被災地では2年後には18%が更地になっていた。2割が住みつづけるのが困難な被害があったのだ。
熊本地震で、等級3の建物の被害は被害ゼロだったことから、「等級3」が注目を集めるようになった。
1と3の家の建設費は、30坪の家だと100万円ほどの差でしかない。等級3にすると地震保険料も安い。長い目で見ればコストは安い。
耐震補強はどうすればよいか。
住宅の被害は、2階が1階をつぶすケースがほとんどだから、2階の真下の1階をまず丈夫にする。それが無理なら2階の真下のシェルター化。それもめんどうなら、2階の荷物を減らして軽くして、2階の真下に丈夫な倒れない低めのテーブルなどの家具を周囲に設置すれば、家がつぶれても生存空間になりうるという。
耐震等級3の意味
目次