■北陸新幹線を考える研究者有志の会 250224
今の京大総長は、医学部出身の官僚タイプでおもしろみのかけらもない人だが、「総長カレー」をつくり、俳人でもある尾池さんは山極寿一さんとならんで、ユニークな言動で知られていた。
その先生が北陸新幹線の小浜ルートや地震についてかたるというから京都まででかけた。
地震を科学的に分析することで、地下の構造や地質、地球の歴史まで読み解いていくという話がダイナミックで面白かった。(以下要約)
プレート運動によって南半球の陸地は北に移動し、北半球に大陸が集中した。それによって地球の軌道に変化がおこり、氷河期と間氷期を繰り返すようになった。
世界の小さな地震の分布を見ると、分布域が細い部分は、そこから少しずつプレートが上昇してきていて、逆に日本列島のように分布域が広くてべた一面のところはプレートが沈みこむ場所だ。活火山そういう場所に集中している。世界中でプレートが4枚もあるのは日本だけだ。ちなみに台風は赤道にはない。赤道はほとんど風が吹かない。
地球上で地震が起きるところは限られている。ヨーロッパは「安定大陸」で、全部岩盤でできている。大きな地震は起きない。
それにたいして「変動帯」は岩盤が崩れて「土」が増える。
安定大陸の川はゆるやかだからミネラルが水にとけこんで硬水になる。獣の肉のアクがとれてブイヨンができる。日本は急流だからミネラルが溶け込む余裕がないから軟水。だからだしの文化ができた。
プレートが南からやってくるから、南ほど新しい地層になる。伊豆半島は最近(100万年前)になってぶつかった。本来は沈みこむのだけど、マグマが軽いから下に沈まなかった。
地震の分布図を時系列で比較すると、同じところに同じように地震がおきている。道路も川も地盤がくずれる活断層に形成される。
京都近辺では、東西方向におされて活断層が南北にできている。奈良盆地は長らく大地震の記録がない。ということはそろそろ次の地震がおきる可能性が高い。
近畿の山はだいたい標高900メートル。活断層が全域で同じように動いているから高さがほぼ同じになる。活断層の上昇は100万年で1000メートルぐらいだ。京都盆地は活断層に囲まれていて、それらが上下運動することで盆地になった。活断層が盆地や平野を生みだしたのだから、近畿では大地震は大都市直下でおきる。
活断層地震の発生確率はネットで確認できる。南海トラフのように「30年以内の発生確率80%」という数字はないが、「30年以内に3%」というのはSランクでかなり危険であることを示している。阪神淡路大震災前日の数値を計算したら「8%」だった。能登はそういう危険性さえ指摘されていなかった。原発は、地震の歴史が記録されていないところに建設されている。実はそういう場所のほうが次に断層型の地震がおこりやすい。
震度やマグニチュードを体で知ることが大切だ。
日本ではM6になると、死者がではじめる。(家が弱い中国ではM5)
震度0~7というのは日本だけのスケールだ。座り込んでしまうのが6弱。1秒で2キロの岩盤が割れる。その時間の長さでどれだけ岩盤が割れたかがわかる。10秒もゆれたら津波が来ると思わないといけない。
同じ震度2,3でも「飛び起きる」という人も、気づかないという人もいる。毎回飛び起きる人の家は、家の構造がもろいか、地盤が悪いと思わなければならない。
「地盤サポートマップ」(https://www.j-shield.co.jp/supportmap/)というサイトに住所を入れると、揺れる地盤か、液状化しやすいかがひとめでわかる。
東日本大震災では1カ月前の2月から地盤がわれる「前震」がおきていた。同じ場所で小さな地震が起きるということは「ここから割れます」と警告しているようなものだ。
関西は古い記録が残っていて、ほぼ100年に1度大地震が起きている。
阪神淡路大震災があった1995年から活動期に入り、それは60年つづく。50年目に南海トラフが起きることが多い。その他の要素を加味すると、南海地震は2038年ごろと予測されている。1年のなかでは9月から3月の可能性が高い。
トンネル工事は確実に水源に影響を与える。
リニアの工事では井戸枯れがおこり、北海道新幹線の札幌延伸工事でも牧場の水源が枯渇して牛の削減に追い込まれた。事業者側は「地下水に配慮して」とか「シールド工法だから影響しない」などと説明するが、地下水は水たまりでなくぜんぶつながっている。流れが変わると水の質も量もかわる、そういうことを知らぬふりをして「影響がない」というのは大ウソだ。
大正時代、奈良電(近鉄)は陸軍の意向もあって地下鉄になる予定だったが、伏見の酒造組合が反対して頓挫した。
1930年の丹那地震は、丹那トンネルを掘ったときに地下水が移動して誘発された可能性が高い。丹那トンネルの上の山葵田はトンネル工事で水が枯れて牧場になった。
丹那はすでに地震が起きたから安全だが、新幹線の山科のトンネルは断層を通っているからこわい。
リニアは断層だらけのところに線を引いている。工事中に断層地震を誘発してくれたほうが、その後は安全になるからよいかも知れない。高いダムの建設や、川の水量の急増も地震を誘発する。
昭和49年に神戸市がつくった「神戸と地震」という報告書には「(地震で)壊滅しかねない」と書いている。神戸新聞は「神戸にも直下地震の恐れ」という記事を出していた。地震の9日前の神戸新聞のコラムは「尾池教授は…西南日本は20数年の間地震の空白域になっており、京阪神にM7級が起こってもおかしくない」と書いていた。
昭和49年の報告書は「なかったこと」にされていた。
2011年1月には、「福島には巨大津波はない」とされた。
「安心安全」という言い方はおかしい。「不安の反対は安心 安全の反対は危険」だ。神戸の人は本当は「危険」なのに「安心」してしまっていた。