本と映画と博物館– category –
-
本と映画と博物館
東北発の震災論 周辺から広域システムを考える<山下祐介>
■ちくま新書240625 東日本大震災から2年後の本。筆者は2011年4月まで、弘前大におり、その後東京の大学に移って、被災地を歩いてきた。 <広域システム>と<中心ー周辺>の問題こそが震災であらわになったとする。原発事故にそれが典型的にあらわれ... -
本と映画と博物館
「日本」とはなにか<米山俊直>
■人文書館 240619 著者はアフリカから祇園祭などの日本の祭りまで調べてきた文化人類学者。学生時代、私は彼の祇園祭フィールドワークのゼミに参加させてもらった。えらぶらない人で、フィールドワークで鉾町に2カ月みっちりかかわるのは得がた... -
本と映画と博物館
美の呪力<岡本太郎>
■新潮文庫240607 1970年の連載中のタイトルは「わが世界美術史」。 美術史といいながら、印象派とかバロックとか分類して歴史をたどる本ではない。 最初にとりあげるのが、カナダエスキモーの積み石「イヌシュク」や霊山の石積みなどだ。 石積み... -
本と映画と博物館
日本人の知らない武士道<アレキサンダー・ベネット>
■文藝春秋20240519 著者は剣道・居合・長刀を実践するニュージーランド人の武道家。 新渡戸稲造の「武士道」とは異なり、みずから武道をやっているからこそわかる身体感覚についての記述がおもしろい。 たとえば「残心」。「一本が決まっても、気を抜... -
本と映画と博物館
季刊民族学165 岡本太郎の民族学
■20240518 「芸術は爆発だ」というヘンなおじさん、というのがぼくらの子どものころの岡本太郎のイメージだった。 戦前にマルセル・モースに師事して民族学をまなび、帰納的で具体的な姻族学と、演繹的で抽象な芸術の双方で創的な世界をつくりあげた天... -
本と映画と博物館
古文書返却の旅 戦後史学史の一齣<網野善彦>
■中公新書20240507 東海区水産研究所の一室で1949年、全国の漁村の古文書を蒐集・整理・刊行し、文書館・資料館をつくるという事業がはじまる。研究所の月島分室が担当し、日本常民文化研究所に委託した。 だが1954年度で水産庁は研究所への委託予算を... -
本と映画と博物館
最澄と空海<梅原猛>
■最澄と空海<梅原猛>小学館文庫 20240429 ▽仏教の流れ 釈迦の言行録の経典をもとに、500年ほど原始仏教(小乗仏教)がつづき、1世紀から3世紀にかけて龍樹らが革新運動をおこす。 欲望を否定して清い生活をしているだけではなく、大衆のなかには... -
本と映画と博物館
災害と人間 地震・津波・台風・火災の化学と教育<寺田寅彦>
■仮説社 「天災は忘れた頃来る」という言葉で知られる寺田寅彦の災害関連の文章をまとめたブックレット。日本人の忘れやすさを批判する論考は、東日本大震災や能登半島地震を体験した今の時代にこそ読まれるべきだ。 ▽津波と人間 1933年の東北への津... -
本と映画と博物館
江戸という幻景<渡辺京二>
■弦書房 かつて江戸時代は封建的な遅れた体制だと評価されていたのにたいし、最近の江戸ブームでは、江戸時代の近代に通じる部分をとりだして「実は意外に近代的だった」と評する。どちらも近代を基準に過去を評価している。 渡辺は、江戸は、もう二度と... -
本と映画と博物館
まつろわぬ「両面宿儺」に自らを重ねた、まつろわぬ円空
2022年、岐阜県高山市丹生川町の「千光寺」という山寺を訪ねた。 1600年前の仁徳天皇の時代に、乗鞍山麓の豪族である両面宿儺(すくな)が、古代信仰の場として開山したとつたえられている。 千光寺の両面宿儺 仏宝館 両面宿儺は、ひとつの胴...